早朝の 霧が 牧草地を 薄く 包み 遠くの 山稜が 青く 途切れます。 木道を 進む たび 霜の 粒が 靴先で きらめき 目を 上げれば エーデルワイスの 影が 岩陰に ひっそり 揺れます。 深く 吸って ゆっくり 吐く だけで 行程の 設計図より 確かな 指針が 胸に 描かれます。 今日も 穏やかに 進みます。
吊り橋の 板が きしむ ほど 静まり返り 下を 覗けば 透ける 流れが 岩肌を 撫で 縞模様の 渦が 踊ります。 ひと口 分の 水を 掬い 口内で 軽く 転がせば 石灰岩の 記憶が 微かな 甘みで 返事を し 心が ほどける 音が 聴こえます。 足跡は すぐ 消え しかし 体内の 静けさは 長く 残り 次の 一歩を やさしく 支えます。
ピランの 石造りの 家々が 寄り添い 角を 曲がるたび 潮の 匂いが 強くなります。 塩田の 道を 歩き 風に 揺れる 白い 山を 眺めつつ 立ち止まり 夕暮れの 朱色が 水鏡に 滑り込む 瞬間を ただ 見送ります。 ゆっくりが 最短の 到達法だと 体が 理解します。 石段に 座り 地元の 会話を 断片的に 聴き 波打ち際の 小鳥が 塩を ついばむ 仕草まで そっと 目に 焼き付けます。
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